2024年 この春にルイヴィトン、プラダからテーブルウエアが発売になりました。
ルイヴィトンが好き、器も好きな私は「こんなの待ってた!」と心の中で叫んだのでした。
ファッションブランドの食器はテーブルウエアを専門に製作するメーカーの美しさとはまた違った魅力があります。そのブランドの持つ魅力、印象や世界観を投影します。
日常に使うのはもちろん、日常から気分を変えて過ごす時間のために。
結婚やお引っ越しのお祝いで使うギフト用に、内祝いの品としてお選びいただいても喜んでもらえるお品になるかもしれません。ファッション系ハイブランドのテーブルウエアについて「良さがわからない」というかたにも。今年参入したルイヴィトン、プラダを交えてチェックしてみたいと思います。おつきあいいただけたら嬉しいです。
目次
- 世界のテーブルウエアブランドのおさらい
- ファッション系ブランドの参入
1.GUCCI
2.PRADA
3.LOUISVUITTON
4.BOTTEGAVENETA
5.CHRISTIAN DIOR
6.TIFFANY
7.HERMES - 価格の比較
- ファッション系ブランドでテーブルウエアを選ぶ理由
1.世界のテーブルウエアブランド
世界にはその国を代表する歴史ある陶器メーカーがあります。
【デンマーク】
Royal Copenhagen(ロイヤル・コペンハーゲン) 創業1775年~
【イギリス】
WEDGWOOD(ウェッジウッド) 創業1759年
【フランス】
(セーブル地区)
SEVRES(セーブル) 創業1738年
(リモージュ地区)
BERNARDAUD(ベルナルド) 創業1863年
HAVILAND(アヴィランド) 創業1842年
RAYNAUD(レイノー) 創業1849年
【ドイツ】
MEISSEN(マイセン) 創業1710年
【ハンガリー】
HEREND(ヘレンド) 創業1826年
【ロシア】
Imperial Porcelain Manufactory(インペリアルポーセリン) 創業1744年
【イタリア】
GINORI 1735/Richard Ginori(リチャード ジノリ) 創業1735年
【日本】
OKURATOUEN(大倉陶園) 創業1919年~ ※1
正統派テーブルセッティングは同じブランド、同じラインで美しく揃えることが基礎であり、上記のような王道テーブルウエアブランドでは、数十年に渡り同じラインを作り続けていることから、家族が増えたとき、破損してしまったときに買い足すことができる安心感があり、またはじめは基本的なセットを揃え、年々ピースを増やしながら代々受け継ぐことができることも魅力のひとつです。
※1 = グループ企業のノリタケの前身日本陶器合名会社は1904年創立
ファッション系ブランドのテーブルウエア参入
世界のラグジュアリーファッションブランドは,、CHANELであれば帽子、HERMESは馬具、FENDIは毛皮といった創業時の商いから取り扱う商品を増殖して現在のような総合ファッションブランドの姿になっています。
売上増へ取扱い品の拡大
現在アジア圏でのブランドブームが続く追い風の中、近年の傾向としては芸術、文化、レストランやカフェ、宿泊施設などへの参入、フレグランスからの化粧品への展開、ブランケット、クッションからの家具、オブジェ、食器、グラス、カトラリーなどのホームコレクションに進んでいます。顧客と物という点の接触から点であった物が増殖し線となり、それが多岐に渡り面となって、生活に浸潤し365日あらゆる時間、一生を包むようになってきています。
SNSで映えるプライベート時間
SNSを通じてプライベートな空間や匂いまでも画像で公開できる現代。コロナ禍を経て見直された家庭での食事や時間、キャンドルやクッション、テーブルウエアなどのホームコレクションも画像で映える重要なアイテムになっています。
GUCCI
グッチのテーブルウエアは1990年代後半にも作られていましたが、しばらくみかけないと思っていたところイタリアのリチャードジノリ(現ジノリ1735)を2013年に買収。これからは積極的にポーセリン製品を展開していくと思われていたのですが、残念ながら現在はハーバリウムのトワル・ド・ジュイプリントの基本的なセットのみです。もちろんこのシリーズは買収したリチャードジノリ(現ジノリ1735)で作られています。
同じケリンググループ企業になりますので、もっと協業製品が増えていてもいいように思いますが、展開アイテムは少なめです。
PRADA
プラダはファーストコレクションで5つのラインを発表しています。どれもコンテンポラリーなPRADAらしいデザインです。
日本の青磁器に着想を得て、職人技とプラダのデザインコードを洗練されたデザインに融合。釉薬のかかった上質なポーセリンを使用し、アイコニックで繊細なニュアンスに美しい手塗りの縁を施したアイテム。
https://www.prada.com/jp/ja/
蓋つきのティーカップは日本の蓋付汲出煎茶椀を思い起こさせます
ここから余談です (飛ばして次へどうぞ)
日本の青磁から着想を得て・・・との記述をみて、この色はプラダのカラーでもあるけれど確かに青磁の色なのだ。濃淡も少なくあえてマットな質感に見せているのでコンテンポラリーな印象になっていたので日本の青磁を意識しているたとは考えも及びませんでした。そして・・・「MADE IN JAPAN」まさしく日本で作られているのです。
2024SS Mame Kurogouchi 陶磁器からのインスピレーションを得たコレクションで
三田青磁の陽刻のようなドレスがありました。それを見た時から青磁の器が欲しいなと思っていたのです。
中国で始まった青磁は、のちに日本に渡ってきたものですが、日本では三田青磁、鍋島青磁が知られています。青磁と言っても幅広く色も青系でないブラウン系のものからからグリーンがかったもの、ブルーに近いもの、青白磁と言われる「水の色」のようなものもあります。
このような文様で青磁の美しさを楽しむものもあり、模様はなく器のカーブで色を楽しむものもあります。
釉薬が薄くなる縁(ふち)の美しさをPRADAはマットな色目にしあえてネイビーのラインを入れ、アジアっぽい雰囲気を消しているのです。このような発想をできることがファッションブランドならではです。アンティーク田中さんの三田青磁は大正から昭和初期のころの品で既にご売却済。似ているものを探してみたもののなかなかみつかりません。アンティークから現代に作られているお品も探してみました。
こちらは現代のお品。
佐賀にある虎仙窯でもほとんどの青磁の器で素地に曲線や模様があり、色と形だけを楽しむようなものはありませんが、上記のお茶碗とどんぶりが唯一PRADAの着想に近い無地のものでした。青磁とはという定義を持っていないファッションブランドならではのPRADAのデザインになるのかもしれません。日本のどこかで作られているPRADAの器ですが、どこの窯が請け負ったのか気になるところです。
プラダのトライアングルデザインしたようなVienna Greenも素敵です。こちらはドイツで作られています。
1904年に有名なウィーンの建築家ヨーゼフ・ホフマンがデザインしたグラフィックモチーフにインスピレーションを得た、モダンな幾何学装飾があしらわれています。毎日のさまざまなシーンで活躍する、上質なポーセリンのセット。エレガントな朝食を演出したり、モダンなテーブルに洗練されたエレガンスのタッチを添えます。
https://www.prada.com/jp/ja/
印象的な絵柄がいい感じです。キャッチトレイやボックスを単品で使っても素敵なお部屋のインテリアになりそうです。
ルイヴィトン
純白のリモージュ磁器にモノグラム・フラワー タイル パターンをあしらった、エレガントなディナープレート。ラウンド モノグラム・フラワー モチーフとポインテッド モノグラム・フラワー モチーフを組み合わせた色絵が、水彩画のような繊細な表情と奥行き感のある色合いを生み出します。個性的なテーブルセッティングを引き立て、コレクションの他のアイテムと美しく調和するデザインが魅力です。
https://jp.louisvuitton.com/jpn-jp/
トップの画像にも使いましたが ルイヴィトンのアイコン モノグラムフラワーをデザインしたこのシリーズです。
こちらはリモージュ製です。大阪、東京にあるルイヴィトンカフェ「LE CAFE V」(ル・カフェ・ヴィー) の器がフランスのリモージュにあるBERNARDAUD(ベルナルド)社製のものでしたので、こちらもベルナルド社で作られているものと思われます。この延長線上に考えてもテーブルウエアの展開は必然だったのかもしれません。
こんなの待っていた!とまで思わせたのに買っていない理由は「どんなお料理を乗せるか?」と想像したとき、美しいものしか浮かばず衝動買いにブレーキをかけています。モノグラムフラワーが好きだからこその私に限った想いかもしれませんが、お肉や魚のお料理を乗せることを想像できなかったのです。フルーツやデザートならOKかな・・・と迷っていたら新柄が出て更に迷っている状況です。
ハイビスカスの花やサンゴやスターフィッシュ、南の島を思いうかべるデザインです。
モノグラムフラワーをモザイクのようにアレンジしたデザイン。やっぱり私にはモノグラム柄にリスペクトが強すぎてこのプレートにグリルした魚やお肉を乗せることは躊躇していまいます。
ボッテガヴェネタ
グッチと同じケリンググループのボッテガヴェネタです。ケリンググループ内でジノリ1735で器を協業しているブランドがあってもいいのではないかとチェックしたのですが、クロエ、サンローラン、バレンシアガいづれもテーブルウエアの展開はありませんでした。LVMHのようにリモアがグループ参入した直後にフェンディ、翌年にはディオール、オフホワイトとコラボでトロリーを作る。ティファニーがグループ参入したらフェンディでティファニーブルーのビジュー付バケットを作る。といった錬金術 (おっと失礼)付加価値を高め合った話題作りを提供するのですが、ケリンググループは買収してグループ企業になったとはいえそれぞれ企業方針を尊重することになっているようです。(そんな件をケリンググループのWEBサイトで以前読みました)
ボッテガヴェネタでオブジェのようなトレイがあったのみ。
でもこのトレイもイントレチャートになっているこだわりがすごい!
手作業でクレイを編み上げているそうです。火山性の釉薬で~北ヨーロッパからとりよせ研究に2年~と商品説明は詳しく書かれてありましたがサイズの表記はなし。トレーとなっていますがたぶんオブジェなのだと思います。
クリスチャンディオール
デイオールのラインナップの多さにはびっくりしました。カフェやレストランの展開を積極的に行っている背景を鑑みると納得です。ディオールには象徴するアイコンがいくつかありますが、ムッシュディオールの好きだった花すずらんはもちろん、蜂、星、太陽、カナージュ、ミスディオール・・・それらをアレンジしたものどれも素敵でディオールの本気度はテーブルウエア専業メーカークラスです。テイストとしては甘めが多いのでどなたにも好まれるわけではないかもしれませんが、カトラリーやナフキンなどの周辺製品も多く、手吹きハンドペイントのグラスはディオールの審美眼に感動すら覚えます。とにかく驚きのディオールです。陶磁器製品はフランスリモージュ製。
価格帯はコーヒーカップとソーサーが別売りになっていて合計で1客40,000円前後。デザートプレートで1枚25,000円~30,000円です。
ティファニー
ティファニーも豊富なラインナップがありました。グラス類も多く、シルバーのグラスやボウル、キッチンやバーギアが他では見かけないアイテムです。
19世紀のティファニー ホローウェアに初めてあしらわれた動植物のモチーフに着想を得た、自然界の美しさを巧みに表現するティファニー ジャルダン コレクション。ポーセリンで作り上げられたディナー プレートには、生命力に満ちあふれた鳥、蝶、花の繊細なイラストが描かれています。その縁にはゴールドのハンドペイントが施され、洗練された仕上げを演出します。
https://www.tiffany.co.jp/
自然をモチーフにした繊細な絵柄のティファニーらしいコレクション
こちらはフランスリモージュ製
マッチングする手吹きのグラスウエアもあり手彫りでデザインされている見事なアイテム。こちらはハンガリー製。
ティファニーの 「T」をデザインしたコレクション。飽きのこない、お料理を邪魔しない結果的に実用性の高い堅実なものになると思います。こちらもフランスリモージュ製。
ティファニー アーカイブに残る藤の花に着想を得た傑作の数々を基に生まれた、ティファニー ウィステリア コレクション。それぞれのデザインには、再解釈された藤の花のモチーフが手作業で丁寧に描き上げられ、タイムレスでフェミニンなエレガンスを演出します。
https://www.tiffany.co.jp/
こちらもフランスリモージュ製 手書きです。
1枚1枚、花や葉の濃淡描き分けているところなどペインターの緊張感が伝わってきます。
このウィステリアにもマッチングするグラスウエアがあります。
こちらはガラスで、手吹き製法となっているので手吹きではないようですがペイントは手書きです。
ワイングラス1客¥54,450
ティファニーには日常使いのアイテムもたくさん揃えています。
人気になったペーパーカップスタイルのポーセラーツカップ
デミタスやラージサイズも加えてカラーも豊富に進化しています。
びっくりするほど調子に乗ってます(笑)こちらは日本製のボーンチャイナです
Noritake でつくられているというウワサを聞いたことがありますが定かではありません。
ナルミ、ニッコーなど高品質なボーンチャイナの製造企業がありますのでどこかで作られているのですね。ティファニーのボーンチャイナ製品はMADE IN JAPAN です。
ティファニーの価格帯はボーンチャイナ製のカップアンドソーサーで1客25,000円、ポーセリン製で2客70,000円前後
デザートプレートで1枚¥15,000~¥25,000です
エルメス
SNSでいちばん見かけるテーブルウエアはHERMESではないでしょうか。
HERMESがテーブルウエアをくつくりはじめたのは1984年ですでに40年の歴史があります。
今回改めてチェックしてエルメスのすごさを再確認した思いです。ライナップの数ではディオールよりやや少ないか同じくらいではないかと思いますが、それぞれのコレクションにエルメスの精神が繋がれているように感じました。更に注目していただきたいところがアイテムのひとつひとつが異なるデザインになっていて、トータルでコーディネートされているのです。
通常は基本のデザイン画をプレートの大きさ、カップの大きさに見合うように縮小拡大時に少しアレンジを加えて転写していくのですが、エルメスはそれぞれにデザインされているのです。アイテム単体で完結もしているし、揃えても美しい。エルメスの細部にまで完璧なものづくりの姿です。
モーニング、ディナー、ティー&コーヒー用のテーブルウェア24点で構成された
https://www.hermes.com/jp/ja
〈ソレイユ・ドゥ・エルメス〉 コレクション。ポーセリンの白に深いイエローが調和し、
これを細線で引き立てることで、万華鏡のように広がるパルメット模様を形成します。
フランス製 デザイナー: アリエル・ド・ブリシャンボー
コレクションが、具象と抽象の間を彷徨う夢幻的な散策へと誘います。
https://www.hermes.com/jp/ja
それは陽気なカラーパレットの英国式庭園が繰り広げるストーリー。
モーニング、ディナー、ティー&コーヒー用のテーブルウェア27点に展開します。
フランス製 デザイナー: ナイジェル・ピーク
植物の伝統と芸術の境界に位置する〈パシフォリア〉は、
https://www.hermes.com/jp/ja
この上なく野性的な状態の自然の多様性と寛容性へオマージュを捧げます。
このコレクションで生い茂る植物相を表現するために32色が使用され、
一部のアイテムには内側までディテールが入り込んでいます。モーニング、ディナー、ティー&コーヒー用テーブルウェアと、インテリア小物など計30点で構成されたコレクションです。
フランス製 デザイナー: ナタリー・ロラン=ユッケル
パリのフォーブル・サントノレ通り24番地に位置するエルメスブティック。その装飾に見る独創性豊かなデザインコードが、幾何学模様の帯状装飾を通して〈モザイク 24〉 ゴールド コレクションに再現されています。
https://www.hermes.com/jp/ja
フランス製 デザイナー: ブノワ=ピエール・エムリー
エルメスはシルバーブランドのPUIFORCAT(ピュイフォルカ)Accueil – PUIFORCAT、グラス・クリスタルブランドの SAINT-LOUIS(サンルイ)Saint-Louis を傘下にしています。パリ、銀座、ソウルのエルメスカフェでは3ブランドの製品を食事と共に体験することができます。それだけでゴージャスな時間です。
エルメスの価格帯は広く カップアンドソーサーで 1客¥35,000前後~¥60,000台
デザートプレートで1枚¥20,000~¥30,000 になります
価格の比較
コーヒーカップ&ソーサー 1客
MEISSEN(ブルーオニオン) | 38,500円 |
WEDGWOOD(ジャスパー・コンラン シノワズリ) | 9,900円 |
ARABIA (パラティッシ) | 7,700円 |
LOUISVUITTON (バイザプール) | 31,350円 |
HERMES (ソーエルメス) | 33,000円 |
ディナープレート(27cm前後)1枚
ROYAL COPENHAGEN(ブルーフルーテッド ハーフレース) | 28,600円 |
HERND(ウィーンの薔薇) | 37,400円 |
OKURA TOUEN (ブルーローズ 8011) | 16,500円 |
DIOR(ムッシュ ディオール) | 23,500円 |
TIFFANY(ティファニージャルダン) | 24,750円 |
価格の点ではテーブルウエアメーカーの高価格帯商品と同等くらいになっています。価格だけでそのお値段に見合うものかどうかを判断することはできないですが、一流と言われるブランドはどんな商品を手掛けてもその一流に匹敵するものを目指している自負を感じます。ブランドネームバリューの延長線上に作るものでは本物を知る顧客には受け入れられないことを知っているからこそと思います。
まとめ ファッションブランドでテーブルウエアを選ぶ理由
デザイン性が高い
詳細にチェックするまでは、ハイブランドのテーブルウエアを選ぶかたというのはそのブランドが好きで、その延長線上にテーブルウエアも。と思っていました。提供するブランド側にも「トータルでどうぞ。」ワンストップで「ついでにいかが?」という発想が少なからずあると邪推していました。とんでもないことにございました。ラグジュアリーブランドのモノ作りに対する妥協のない精神、美しさの追求はやはり一流であると思いました。ブランドのネームがなくても選んでもらえるデザインの素晴らしさがそこにありました。
信頼を裏切らないクオリティ
デザイン性で優位のラグジュアリーブランドが、上質な陶磁器の生産する地域の窯を見極めて生産することで最高のものが作られるわけです。ラグジュアリーブランドはスタートが皮革製品であれ、オートクチュールであれ現在はトータルにハイクオリティな物を提供するメゾンなのです。